2005年05月21日
盗難カード経度過失 「50%以上」補償で決着 自民部会
自民党は十九日、財務金融部会・金融調査会合同会議を開き、偽造・盗難キャッシュカードによる不正な預金引き出し被害の補償に関する法案の概要を決めた。焦点の盗難カードによる被害補償については、預金者の過失が軽度の場合、金融機関に被害額の「最低50%」を補償するよう義務付けることで決着した。自民党は公明党と協議し、与党案として今国会に提出、年内の施行を目指す。
法案は盗難カード被害への補償割合について、預金者の過失度合いに応じて格差を付けることを明記。
具体的には
(1)預金者に過失がない場合、金融機関が全額補償する
(2)預金者の過失が軽度の場合、金融機関側が50%以上を補償する
(3)預金者に重大な過失がある場合、預金者が被害を全額負担する
の三段階。銀行や信用金庫、信用組合、農業協同組合、日本郵政公社などすべての金融機関が対象となる。
補償にあたっては預金者が、金融機関と警察に盗難被害を届けることが条件。金融機関への届け出日からさかのぼり、三十日間に引き出された被害額が補償範囲となる。
一方、偽造カードの被害については、金融機関のシステム上の欠陥にも起因するため、金融機関が預金者の過失を立証できなければ全額補償することですでに合意。公明党と協議したうえで、法案に盛り込まれる。
一艘の防犯意識 預金者も
偽造・盗難キャッシュカードを使った預金引き出し被害について、自民党の法案の概要が決まり、被害者救済は大きく前進した格好だ。ただ、ATM(現金自動預払機)利用限度額の引き下げによる利用者の利便性低下や預金者の防犯意識が甘くなる恐れなど、負の影響も懸念される。預金者には、カード管理に対する自己責任が一層、求められることになりそうだ。
「この法案が国会を通過すると、カード管理さえきちんとしていれば、被害者のうち九割の人は救済されるだろう」。十九日の財務金融部会終了後、ある自民党幹部は、被害者救済の道が開けたことを強調した。今回、自民党が偽造カードに加えて盗難カードによる被害についても、金融機関の補償を義務付けたのは、「手口が違うからといって、補償対象を選別するのはおかしい」との世論が高まったからだ。
背景には盗難カード被害の深刻さがある。警察庁によると、キャッシュカードを使った不正な預金引き出し被害は平成十六年一−十一月に、約三千件あり、被害総額は約二十一億円に上る。偽造と盗難の内訳は不明だが、ある大手銀行幹部は「盗難カードによる被害が大部分」と指摘する。
被害者団体「ひまわり草の会」(中林由美江会長)は「盗難カードについても被害を負担させれば金融機関側は防犯対策に力を入れるはずだ」と金融庁や自民党に抜本的な被害救済策を求めた。金融庁も「今回の法案はこうした被害者の考えを取り入れたものになっている」(幹部)との認識を示している。
ただし、金融機関側にとっては財務上の負担は避けられない。財務への負担を軽減するため、金融機関側はATMの利用限度額の引き下げなどの防衛策を検討しており、利用者の利便性が低下する懸念は残る。
また、カードや暗証番号管理に関する預金者のモラルハザード(倫理観の欠如)につながる懸念もある。被害が補償されるなら、暗証番号に対する注意が散漫になる事態も想定される。
被害者救済の道は一歩進んだが、金融機関は被害者救済のためのコスト負担と利便性のさらなる向上という問題に直面することになる。
(産経新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050520-00000007-san-pol
法案は盗難カード被害への補償割合について、預金者の過失度合いに応じて格差を付けることを明記。
具体的には
(1)預金者に過失がない場合、金融機関が全額補償する
(2)預金者の過失が軽度の場合、金融機関側が50%以上を補償する
(3)預金者に重大な過失がある場合、預金者が被害を全額負担する
の三段階。銀行や信用金庫、信用組合、農業協同組合、日本郵政公社などすべての金融機関が対象となる。
補償にあたっては預金者が、金融機関と警察に盗難被害を届けることが条件。金融機関への届け出日からさかのぼり、三十日間に引き出された被害額が補償範囲となる。
一方、偽造カードの被害については、金融機関のシステム上の欠陥にも起因するため、金融機関が預金者の過失を立証できなければ全額補償することですでに合意。公明党と協議したうえで、法案に盛り込まれる。
一艘の防犯意識 預金者も
偽造・盗難キャッシュカードを使った預金引き出し被害について、自民党の法案の概要が決まり、被害者救済は大きく前進した格好だ。ただ、ATM(現金自動預払機)利用限度額の引き下げによる利用者の利便性低下や預金者の防犯意識が甘くなる恐れなど、負の影響も懸念される。預金者には、カード管理に対する自己責任が一層、求められることになりそうだ。
「この法案が国会を通過すると、カード管理さえきちんとしていれば、被害者のうち九割の人は救済されるだろう」。十九日の財務金融部会終了後、ある自民党幹部は、被害者救済の道が開けたことを強調した。今回、自民党が偽造カードに加えて盗難カードによる被害についても、金融機関の補償を義務付けたのは、「手口が違うからといって、補償対象を選別するのはおかしい」との世論が高まったからだ。
背景には盗難カード被害の深刻さがある。警察庁によると、キャッシュカードを使った不正な預金引き出し被害は平成十六年一−十一月に、約三千件あり、被害総額は約二十一億円に上る。偽造と盗難の内訳は不明だが、ある大手銀行幹部は「盗難カードによる被害が大部分」と指摘する。
被害者団体「ひまわり草の会」(中林由美江会長)は「盗難カードについても被害を負担させれば金融機関側は防犯対策に力を入れるはずだ」と金融庁や自民党に抜本的な被害救済策を求めた。金融庁も「今回の法案はこうした被害者の考えを取り入れたものになっている」(幹部)との認識を示している。
ただし、金融機関側にとっては財務上の負担は避けられない。財務への負担を軽減するため、金融機関側はATMの利用限度額の引き下げなどの防衛策を検討しており、利用者の利便性が低下する懸念は残る。
また、カードや暗証番号管理に関する預金者のモラルハザード(倫理観の欠如)につながる懸念もある。被害が補償されるなら、暗証番号に対する注意が散漫になる事態も想定される。
被害者救済の道は一歩進んだが、金融機関は被害者救済のためのコスト負担と利便性のさらなる向上という問題に直面することになる。
(産経新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050520-00000007-san-pol